システムデザイン分野

深層学習を活用したヘルスケア分野での画像解析技術

  • 越野 一博

    教授

    Koshino Kazuhiro

    E-mail:

    koshino@do-johodai.ac.jp

    キーワード

    医用画像、深層学習、機械学習、画像処理、薬物動態解析

研究を始めるために必要な知識・能力

数学に関する基礎知識(線形代数、微分、積分、確率、統計)を修得していることが必要です。プログラミング言語の種類は問いませんが、構文を修得し、基礎的なプログラミングが行えることが必要です。

この研究で身に付く能力

医用画像には、核磁気共鳴イメージング(MRI)や単一光子放射断層撮影(SPECT)、陽電子断層撮影(PET)などの検査法によって得られる、さまざまな種類が存在します。それらの画像を撮影する原理や、画像再構成プロセスに関する知識が身につきます。疾患の重症度や生理機能の定量化手法と、そのための画像処理手法についても学べます。診断技術の開発や精度向上に向けてはAIも活用するので、深層学習に代表される機械学習の理論、それをプログラミングし、実践する技術も身につきます。研究の過程では、仮説設定、実験、結果の考察を繰り返しながら、目的を達成するための道筋を描く論理的思考能力も養います。

研究内容

【概要】
主に画像を対象として、ヘルスケア分野への貢献を目指した研究を行っています。


【医用画像への深層学習の応用】
深層学習の一手法である敵対的生成ネットワークを医用画像に対して応用し、MRIやSPECT画像の特徴を忠実に再現する画像生成技術を開発しました(右図)。この研究成果は、深層学習の教師データ不足を解消し、診断の性能向上に貢献します。


【診断精度向上のための補正手法】
陽電子断層撮影やSPECTを利用する検査において、患者さんの動きや呼吸によって生じる画像の歪み補正、測定系の物理現象に起因するノイズの除去などの精度向上に取り組んでいます。これらの成果によって、心・脳血管疾患をはじめとする検査における正確な画像化を実現し、臨床現場でのより正確な病態評価に貢献します。


【病態理解のための医用画像解析手法】
画像診断技術と解析手法を組み合わせ、脳や心臓などでの臓器における血流量や酸素代謝、神経受容体の分布などの高精度定量化に取り組んでいます。これらの成果によって、病態の詳細な把握やより深い理解が可能となり、疾患の早期診断や治療効果の評価に貢献します。

【セルフ栄養管理支援】
健康維持のためには、日々の食事においてバランス良く栄養を摂取することが重要です。深層学習の一手法である物体検出を利用し、食事画像を対象に栄養バランス自動判定技術の開発に取り組んでいます(下図)。これまでその作業を担ってきた管理栄養士の支援や、Webサービスを介した利用者によるセルフ栄養管理の実現を目指しています。

主な研究業績

画像診断や支援技術に関する研究成果があります。代表的な業績は、診断用AIの性能向上のために、深層学習を用いてSPECTやMRI画像を人工的に生成する研究(Scientific Reports. 2022、Tomography. 2018)、診断精度向上のため、画像検査における誤差要因を補正する研究(J Nucl Cardiol., 2012、EJNMMI Research. 2012)、薬物動態解析と画像解析手法を組み合わせ、脳虚血性疾患の病態解明の研究(J Cereb Blood Flow Metab. 2024、Ann Nucl Med. 2017)です。科学研究費助成事業における研究費も複数回獲得しています。

研究室の指導方針

学生の自主性を尊重するので、研究テーマの選定、実験方法、レポート作成は学生が主体的に取り組むことを前提としています。その上で、定期的なミーティングで教員が進捗を把握し、研究方針について議論を深めます。この際、教員の発言は学生への指示ではなく、一意見(アドバイス)として学生に捉えてもらうように心がけています。そうすることで、学生が自分の考えに立脚した上で、他者の意見を吟味し、自分の研究へどう活かすのかを考え、研究する能力を本人が育てていくことを方針としています。
医用画像に限らず、深層学習が利用される研究分野や論文の調査、理解も推奨しています。これにより、高度な専門性を備えつつ、分野横断的な視野をもつことを目指します。

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